「、起きろ」
居住区の隅にある部屋にティエリアがやってきて、私に声をかけたのは私が眠りに落ちてすぐだった。
「そろそろ起床の時間だ」
さっきようやく整備が終わってベッドに潜りこめたのにー、と思ったりもしたが私はしっかり睡眠が取れてはいたらしい。
ベッドサイトの時計に眼をやるとグリニッド標準時間で4時間は寝ていたことが分かった。仮眠にしては十分の時間である。
でも眠い!眠い眠い眠い!!!
寝起きで涙の足りない乾いてしょぼしょぼした眼をこすり、まだ起きたくないと未練垂れ流しの欠伸を一つしながらゆっくりと寝返りを打つ。
「今待機中なんだし、あと30分寝たい」
「キミは十分休憩を取っている筈だ」
仰るとおりです。
それでも駄々をこねるように「ううん…」と唸りながら伸びをすると、ティエリアの眉間に深く皺が刻まれた。
紫の髪をさらと流すとむんずとシーツを握って私からひっぺ剥がし、そしてその動作のスピードを緩めることなく、次に私の手首を掴むとその華奢な身体からは想像できないくらい強い力で腕を引っ張りベッドから引き上げられる。
肩が外れそうなその勢いに息を詰まらせる。同時に頭も一気に覚醒した。
「ちょっ、と…!」
非難混じりの声を出してティエリアを仰げば、そのまま上半身を傾けてくる。
珍しく寝起きのキスでもしてくれるのかと期待して薄く眼を閉じかけると、ワインレッドの瞳からは訝しげな視線が放たれた。
少し、いやかなり傷ついた。
観念してベッドから足を下ろすと、同時に彼は私の頭の形でへこんだままの枕を取り上げて小脇に抱え、その空いたスペース、つまり起き上がらせた私の隣に深く腰掛ける。
「なにしてるの?」
「キミが二度寝しないよう、ここで監視する」
そう言って僅か10センチの距離で合わせた視線からは勿論、ロマンスの小さな欠片ですら微塵も感じない。
ただ何かの使命感に燃えているように、悪く言えば義務的に私を見つめてくる。
「あの、ティエリア、」
「梃子でも動かん」
「え、待って。私、着替えたいんだけれど」
「梃子でも動かん」
えー……なんなの、この視姦プレイ。
ワッタロッキンアラーム!
(終れ@081228)
※元ネタはガンダムGATEより。片仮名の『キミ』も、漢字の『梃子』も公式です(笑)そこにも萌える。