別れの話

 

 

あと少し。

あとほんの少しで、いつもの十字路。

方向が違う、僕らの別れ。

 

木枯らしが吹く中、彼女と繋いだ手はとても暖かくて、きっと今日も離れがたい。

笑っちゃうよね。僕らは二人とも(実は)冷え症だなんて。誰か別の人の熱を必要としてるなんて。お互い、自分を暖めるのも(多分)精一杯なのに。

でもその僅かな熱をこうやって共用しているのは素敵な事だと思わない?

って、手を繋ぐのが好きな君はいつも言っているね。

(僕も君の手を握り締めるのが好きだ)

「……周助くん、」

「何?」

「ううん…呼んでみただけ」

静かに彼女は微笑んで、そっと指を絡め直した。

いつもたどたどしいその動作は、とても覚束無いものであるのに、僕の心をも捉えて離さない。

「ねぇ、」

「なに?」

「好きだよ」

ななななに!突然!」

「ううん、言いたかっただけ」

 

あと少し。

あとほんの少しで、いつもの十字路。

僕らの別れ。

だけどもうちょっと、一緒に居ようよ。

 

(終)

 

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